ture hearts 第一幕 第一部 最終章 一つの疑念と恋心
とある一組の男女が馬車内で隣同士になって座っていた、女性はどこか楽しげな表情で、男性は不服そうな表情であった。しばらくして男性は口を開いた、「いつ魔族の襲撃があるか分からんのに、わざわざ馬車で移動するか普通?」精悍な顔つきをした青年アンベスト ワースムは隣の少女(戦闘では少女と呼んでいいのか微妙だが)ロアンス三シューに向かって声を掛けた「先の襲撃で人をこき使った罰です。何もわざわざ徒歩でレロンス国に向かう事なんて無いでしょう、ほら、私を守るためにもっとくっついてください」ワースムは心の中で(守るのはロアンスじゃなくて、馬車の操舵手とこの馬車だ・・・)その様子を見ていた操舵手が口を開いた、「お二人さん仲が良いですね、付き合ってるんですか?」その言葉を聞いたワースムは「仲がよさそうに見えるんなら、今すぐに医者に目と頭と心を診てもらって来い、こいつとは互いに戦力としてか見ていない関係だからな、」操舵手は聞き返す「戦力?どうゆうことですかい?」ワースムは忌々しそうに「内部機密だ」区切るようにそう言った。その後ワースムは通信用の魔装を取り出し、シルベール国に敵から入手した情報と、レロンス国の関所を通過するための段取りを要請した。
レロンス国 王都 王城 王女の間
豪華なカーペットの先には王女が座りシャンデリアの下でシルベール国からの通信を受け取った執事がいた一通り通信の内容を読み上げると執事が口を開いた「しかしいいのですか王女様・・・この国では悪魔に狙われ国民は怯えて暮らしているのですよ、わが国では、あの防御壁があるから一応は安全ですけど、いくら勇者とはいえ、よそ者をこの国に入れるなんて・・・」口元の髭をいじくりながら執事はグチをこぼすように言うと、王女マロニア姫は一喝するように言った、「だからこそ必要なのじゃ、あの勇者アンベストワースムが、この国は資源に満ち溢れており、悪魔どもに付け狙われている。この国の資源をレザイアク帝国に奪われるわけにもいかんし、悪魔共がひれ伏すような武力を示さねばならんのだ」執事が困ったように言った、「そのために勇者が必要だと?」マロニア姫が言った「その通りじゃ、この国には、王都と国を覆う対魔障壁が張られているが、守りに入っては勝てぬ、身を守る鎧や盾ばかりでは戦には勝てん、攻める武器が必要なのじゃ、」「了解しましたマロニア王女様」執事は答えた。
同刻 馬車内
「到着しましたよお客さん、あとこの国は検問がとても厳しいので、気を付けてください」馬車から降りて二人が見たものはとてつもなく高い魔導石の壁だった、ワースムは煙草を吸いながら「流石は対悪魔を国策として掲げているだけのことはあるな、魔導石に仕込んである感知や迎撃術式は一万を軽く超えているかな?三シューは「レロンス国は聖神教をベースとして成り立っている国家ですからね、勇者様にとっては居心地が悪いのでは?」
ワースムは煙草を吐き捨てると、こういった、「宗教なんてものは、戦争の道具か、心の拠り所か、排え他的理由になるかだ、両手がふさがるんなら剣でも握ってる方が、いくらかマシだな。」吸殻を足で火を消すと、「とにかくまあ、いって見るっきゃないさあとの事はどうにでもなるだろうからな、」そう言うと早速二人は検問所へ向かって歩き出した。
レロンス国検問所
透明なガラスの向こうで青い制服を着た憲兵が物々しそうに口を開いた「シルベール国からの連絡は承っております。アンベストワースム様とその同伴者ロアンスミシュー様でございますね。王女様から伝言がございます。」
「伝言の内容は?」ミシューが発言すると「内容は良くぞここまできた、わが国は今、守りだけでなく、悪魔を滅する剣を欲しておる。是非ともそなたの力を見せてほしいので王城へ招待してやろうとの事です。」ワースムはため息を吐きながら、「まあ、この国は守りは強くとも、攻め手が迎撃魔術と聖人だけじゃ心もとないからな、そうゆう考え方に行き着くのは、ある意味自然な事か。」憲兵は礼儀正しそうに、「それでは王女マロニア姫の命がございますのでこちらへどうぞ、王城行きの馬車でございます。」憲兵が指差す方向には黄金仕立ての馬車が止まっていた。二人は早速馬車に乗り込み王城を目指す事にした。
レロンス国城下町裏通り
そこは本通りとはかけ離れた湿った裏通りだった。影に身を潜めラシュムミレリアの部下ゲンガルスは通信を取っていた。黒いローブからは顔は見えなかったが口元はだけははっきりと見えていた。「左様ですかミレリア様ワースラー様の息子がこの国に・・・」通信を開いている水晶玉からは若い女性の声が聞こえてきた。「そうなのよ、それでね、二人ともたかが五人の聖人では効果がないと思うの映像は見たでしょ」ゲンガルスはうなずくと「はい、先ほど、しかし聖人でも太刀打ちできないと思うと、手数で攻めるしかないと思います。問題はこの国の二重の防御壁と、どうやってあの二人を国外へ出すかですが、」水晶玉からは「そうよね~そこらへんは貴方の判断に任せるわよ。どのような手を使ってでもあの忌々しい壁を取り除きなさい、これは命令です。」ミレリアの声はひどく憎憎しげだった。「了解致しましたミレリア様、必ず防御壁を破ってご覧にいれましょう。」その声には確かな自信と多少の不満があった。水晶玉の光が消えるとゲンガルスはため息を吐きながら「やれやれだ・・・まさか聖人があそこまでこっぴどくやられてしまうとはな、しかしワースム様、一般人の相手はいったいどう相手するのかな?」その声には暗い感情があった。
馬車内
アンベストワースムは煙草を吹かしながら、「流石はレロンス国瘴気の気配が全くしないな、国お抱えの防御壁の名は伊達じゃないってか、」ミシューはこの国のガイドブックを見ながら、「ご自分が剣代わりになる事に関しては、なんとも思わないんですか?」そう不思議そうに言った。ワースムは高級そうな灰皿に煙草を押し付けるとこう言った「別にどうでもいいさ、勇者に選ばれた時からこうなる事は分かっていた、いまさら腰が引けたから勇者をやめますなんて事はできないしな、おい、ロアンス」そのワースムの声に反応したミシューが顔を上げると「馬車の後方から妙な殺気がきているんだが、念の為に魔眼で調べてはくれないか?」ロアンスは「後で何かおごってくれるんなら良いですよ、」そう言いながら眼帯を取り外した、魔眼に魔力を流し込み緑色に光らせるとミシューはこう言った「後ろの馬車には悪魔の瘴気は感じませんね、ただ精神系統の魔術の気配がします。」ワースムは軽く舌打ちしながら、「となると幻術か、また厄介なものを・・・とにかく標的は十中八九俺だ、だから俺は途中で降りる。」ミシューは何か言いたげに「でも・・・もし標的が渡しがった場合は?」ワースムは言い返した「魔眼持ちである以上幻術を解く術を持っている奴に刺客は向けねえよ実力も俺のほうが上だしな、ロアンスは伝言と姫様に待っていてくれるように頼んでいてくれ、後で何かおごるから」そう言ってワースムは馬車の外へと飛び出していった。
馬車内
(全く、いつもいつも学園でワンマンと聞いていましたが、本当にその通りでしたね・・・まあいいでしょう少しでもあの人のお役に立てるなら光栄ですし、)眼帯を再び装着しながらミシューはそう思った。馬車の操舵手が「どうした嬢ちゃん喧嘩別れか?」ミシューは呟くように言った「関係ないことですワンマンで素敵な勇者様がひとりで勝手に突っ走って言っただけですので、」
城下町 
ワースム達を追っていた馬車は予想通りワースムの手前で止まってくれた。右腰の拳銃に手を掛けながらワースムは「一般人を使うとはせこい度胸だなおい、こうゆう輩が一番頭に来るんだよな俺は」声を荒げながら言った
(まずは先手を取ることだ、半魔である以上幻術にかかる可能性は低いが念のためだ、主導権を握り、相手の出方を待つ、)その声に反応したのか、幻術で操作されているであろう四人の男達が馬車から出てきた。四人は突撃銃型の魔装を手にしながら言った、「貴方が、ワースラーのご子息アンベストワースムですね」その声を聴いた瞬間ワースムは舌打ちした、(まずいな・・・この国で半魔ということがばれたら、正直やりにくくなる。こいつらの狙いはこれだったか!)四人の男達は続けて、「私達は国直属の悪魔祓いです。だから皆さん今すぐ避・・・」その瞬間ワ-スムはシルベール国製の銃を上に向って撃ちながら「この魔装はシルベール国特注の物だこれを手にしている事が何よりの証だ!」そう高らかに宣言した。周囲の人々は魔装に注目しつつも逃げていた、(これで自分が魔帝直属の息子である事がごまかせた、後はこいつらの口をどうやって防ぐかだが・・・)そう考えていると、四人の男の内の1人が口を開いた「その証拠は?」ワースムが反論した「それはコッチの台詞だ、あんたらが国直属の悪魔払いである証拠がどこにある?「それならここに・・・」懐に手を伸ばした隙をワースムが見逃すはずが無かった。ワースムは小声で、「昏倒魔術衝雷弾」銃を握っている手とは反対の手で指先から光の玉が射出され、あたってしまった男は昏倒してしまい、残る三人は、「我々に危害を加えた事により貴方を拘束いたします。」突撃銃型の魔装を構えながら、声をそろえてこういった。ワースムは三人の射線をはずすために、両足に風の魔術を発動させ、「移動術、瞬移転身」爆発的な脚力強化で三人の目の前から消えるように移動すると、一人の男の背後に移動し、首の後ろに肘鉄を食らわせ、気絶させた後に挟み込む形に射線を重ねるようにして、相打ちを狙ったが二人の男は予想通りに動いてくれた、ワースムは煙草に火をつけながら(さて・・・こいつらどうするかな疑惑は少ないが、装備を見る限り本物っぽいしな・・・)その時ワースムの耳に馬車の蹄の音が聞こえてきた、その馬車から降りてきた女性は申し訳なさそうに「すみません、警護をしていた者たちがここで発見されたと言う情報が入ったのですが・・・」ワースムは親指で後ろを指差すと、「その四人なら後ろで寝ている。後は頼みますよ、」そういい残すと王城へ向って走り出した。
レロンス国王城前
黒髪の中性的な美女が王門の前で立っている。とても様になる絵になっていただろう。最もその顔が怒りに燃えていなければの話だが、その主ロアンスミシューは王門に寄りかかりながら二回~三回ため息を吐いていた(全く、こんな事なら一緒に馬車を止めて降りておくべきでした。今頃何をやっているのか・・・戻ったらとっちめてやりましょう)そう考えて目を閉じようとする当の本人が戻ってきた。その瞬間、ストレスの発散代わりに、二本の短剣を投げ付けたが、いとも簡単に両手で捕らえられてしまった。ロアンスは心の中で(やはり、まだまだ精進が足りませんね、いつか敬称を付けてもらえるようにもっと精進していかなくてはいけませんね。)ミシューは気を取り直し、「さあいきましょうか勇者様、後で何かおごるのを忘れないでください」ロアンスが念を押すように話すとワ0-スムは手を後ろに組みながら、「へいへい分かりました、」と言った
レロンス国城下町裏通り
そこには黒いフードをかぶった男が壁に寄りかかりながら、通信球に向ってため息を吐いていた、「やはりあの男は一筋縄ではいきませんミレリア様、はい一応国民には疑惑の目を植えつける事は成功したと思います。」通信球からは、色気のある女性の声が響いていた、「それで上等じゃない、聖神教を国教とするその国では、その成果を挙げられた事でも重要よ、後は勝手に噂が勇者様の首を締め上げてくれるでしょうね?」その女性の声はどこか面白がっているようにも聞こえた。ゲンガルスはため息を吐きながら「そのような事で間違いないと思われます。ミレリア様また御指示がございましたら連絡をお願い致します。」そういってゲンガルスは通信を切った、(ミレリア様は部下を玩具としか見ていないような一面がある。厄介な女性だな、まあ後は聖神教を主体とするこの国が勇者を拒絶するだろう、あのワースラー様のご子息がどう対応するか見ものだな)口元に邪悪な笑みを貼り付けゲンガルスは表通りへと歩いていった、
レロンス国城 王女の間
そこには、赤い絨毯が王座の下まで伸びており、そのおくには豪華な王座があった、その王座の主マロニア姫は二十代の金髪碧眼で歳に比べて少し幼い顔立ちをしていた。マロニア姫が口を開いた、「よくぞ、我がレロンス国へはるばるご苦労であった、そして、その精悍な顔立ちをしているのが、件の勇者アンベストワースムか実に余好みではないか」ミシューの少しムッとした表情を気にも留めずワースムは膝を付いたまま口を開いた、「マロニア姫に褒めて頂けるとは、身に余る光栄です。しかしお言葉ながら、今は魔王討伐の旅の途中ですので」その言葉を聴いた途端マロニア姫は少し不満そうな声で「そうか残念だな本来ならばこの国に滞在させて、その代わりに余の婿に迎えてやっても良かったのだがな・・・」ミシューの鬼のような表情はマロニアが目を閉じていたので見えなかった事が彼女にとって幸いだった、彼女は続けて「なら、魔王を討伐し終った後なら良いのか?」その声には期待と希望が詰まっていた、ワースムは少し考えているような表情をすると「少しだけですが考えておきましょう」と返答した、横にいるミシューは鬼を通り越して悪魔のような表情になりもう少しで姫に向って短剣を投げ出しそうになって「お待ちください!マロニア姫」そこには立派なカイゼル髭をした執事が立っていた、そしてその執事はワースムに向って糾弾するように、「この者は先ほど入った情報によりますとこの国の憲兵を襲ったと言われているのですよ姫様、もしかすると勇者の名を騙ったレザイアク帝国の尖兵かも知れないのですぞ!」
ワースムはミシューに対して意味ありげにアイコンタクトを取ると先の件でため息を吐きつつ眼帯を外しながら義眼を青色に光らせ執事が幻術にかかってないか義眼で見てみた、一通りスキャンし終った後に口を開いた「あの執事は幻術にかかっていませんね。どうやら本当に姫の身を案じて助言しています。高い忠誠心もありますし、」ワースムは仕方なさそうにため息を吐くと「その執事の言う事は前半分は本当です、マロニア姫、私は確かに勇者にあるまじき半魔の身ですが、とある事情があり、魔王を討伐する志は誰よりも高いと自負しています」そうキッパリと発言した、その後に、「実は私は魔王の息子で、今は亡き母の仇をとるために旅をしているのです。」その言葉がマロニア姫と執事、ロアンスミシューの耳に入った瞬間三人は目を瞠った。
次回予告
「なかなかやるじゃないか、さてと今から抵抗するものは殺す、降伏するものは半殺しだ、好きなほうを選ぶが良いさ」byアンベストワースム
「殺しましたよ?最後の絶叫はとても心地よかったですね。」byロアンスミシュー
第一幕 第二部 第一章 その疑惑を晴らすには
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