第一幕 第一部 第三章 波乱の出発 後編
夜 城下町 大衆酒場
「せーの、乾杯ー、」1人の陽気な女性の掛け声で同時に三つのグラスが卓の中央で豪快な音を鳴らした、1人は男、二人は女性、しかし陽気な女性以外のメンバーは不服そうであったが、やがて男が口を開き酒を一気に飲み干した後眼帯の女性にえいるだけです向かって口を利いた、「半魔が相席では、飲みごこちも悪くなるか?それともお堅い修道女様は、酒すら飲む事ができないのか?嬢ちゃん?」黒髪短髪で右目に眼帯をした女性、ロアンス三シューは「馬鹿にしないで頂戴、修道女の規則なんて守る事はほとんどないし、今は魔王討伐の命を受けて仕方なしに協力しているだけです。酒なんていくらでものんできたんだから、それと嬢ちゃんではありません、三シューさんと呼びなさい、」ワースムは半笑いを浮かべながら、「お断りだ、ロアンス三シュー、俺が敬意を払うのは、実力が上のやつか、世話になった人だけだからな、ところで、修道女がいかにも背徳的だな、そんなんでいいのか?」疑問を口に出すように言った勘に触ったのか三シューはあきれるように「半魔よりはましでしょ?」ワースムが無言で曲刃刀の柄に手を伸ばすと、陽気な女性の主ロマナフィアナスが、手をたたきながら大声で叫んだ、「はいはい二人とも今の時点で、仲間割れしたら王家の命に反しちゃうでしょ、それに魔王討伐の勇者が些細な事で女性に手を上げちゃだめでしょ?」ソーセージをかじりながら、ワースムは吐き捨てるように言った「この女を女性と認めたら俺の中の女性の定義が崩壊しちまうんだよ」「それは少し言いすぎじゃないの?」フィアナスが言うと、ワースムは三杯目の蒸留酒を一気飲みすると、言い放った「とにかくだ、ロアンスと俺は互いの事を戦力としか見てないし、そのことはこれから魔王を倒すまで何も変化しない、絶対にな」 フィアナスはワインを嗜みながら、「互いの事を戦力ねぇ・・・もう少しお互いの事を良く知ったほうがいいんじゃないの?」
ワースムはショットグラスでテキーラを飲みながら断言した「そりゃ無いな、」その言葉を聴いていた三シューは片目でワースムを睨んでいたが、歯牙にもかけず言葉を続けた、「俺はチームワークなんて言葉は無縁だし、ピンチに陥りそうな時には、きちんと手助けをするさ、ピンチがくればの話だがな、」フィアナスの目には少し歓喜の表情を浮かべるロアンスが映っていた。その様子を見たフィアナスは(だ~めだこりゃ女心に疎いのは相変わらずか、魔術・剣術に才能を取られすぎて、女心がと言うものが分かっていないんだね、)ワースムは煙草に火をつけて、吹かしながら言った、「それにロアンスと俺が情が芽生えて恋仲になるとは考えてねえよ、今は魔王討伐で手いっぱいだからな、」傍目には今にも短剣に手をかけそうになっていたミシューがいたが結局ワースムは気が付かなかった、
同刻郊外の山道
「そのワースムという奴の首を取れば本当に幹部昇格の話が付くんですね、力天王様、」五人ほどの男たちが、通信用の水晶玉で話をしていた、聞こえてくるのは、鉛のように重く、頭の中に響いてくる声だった、「ああだが、
相手は手ごわい、心してかかるように、」「了解」そこで通信は切れた、一人若い下っ端らしき男が上司に向かって口を開いた、「しかし、どうします?相手はワースラー様の子どもですよ」上司らしき男はため息を吐きながら、
「確かに正面切って挑むのは無謀すぎる、だがな、俺たちにはこれがある。」そういって光り輝く液体を取り出した、「それってまさか・・・身体能力や再生能力を人体に与える聖水ですか?」上司は首を縦に振ると、「しかも一等品のな、流石に五人の聖人に攻められたら半魔といえど太刀打ちできないだろうしな、」
同刻 魔王城
給仕が上等なワインを持ってきたとき、魔帝ワースラーはお気に入りのおやつの時間を心待ちにしているような印象を給仕に与えた、上等なワインを金色の杯に注ぎながら「給仕は言った、よろしかったのですワースラー様
あのような輩に聖水を手渡して、」ワースラーは気楽そうに答えた、「たとえ聖人であっても、我が息子に勝つのは難しいだろうな、せめて、あの四人でやっとだろう、」給仕が冷静な口調で「総司令官様は、どうですか?」ワースラーは、気分を害したのか、一瞬かおを顰めると、こう告げた、「あの娘には誰も勝てんさ、四人が束になってやっとだろうな、とにかくだ、我が息子のお手並み拝見といこうではないか、遠視魔術は忘れるなよ、」そう口にする彼はどこか楽しげでもあった、
翌朝 国境役所前
その男は、左腰に黒い曲刃刀、左肩からは、大剣の柄が覗き、右腰にはオートマチック型の魔導拳銃が二丁かけてあった、「それじゃロアンス、準備はもういいのか?」件の男が口を開くと、修道服の女性が口を開いた、「準備はOKですよ、半・・・いや勇者様それでは参りましょうか、」二人はお互いにうなずいてから振替ってワースムはこう言った「見送ってもらってすまないなロマナ、」声をかけられた彼女は不満そうに、「別に、私は関係ないしね、その代わりに定期的に通信してくればいいよ、じゃあ二人っきりのロマンス旅行と言ってらっしゃいよ」ワースムはため息を吐きながら、「あのな、この旅は魔王討伐の旅であって、新婚旅行じゃないんだ、あんま茶化すな、フィアナス、仮にもしそうだとしても実父討伐の新婚旅行なんて嫌過ぎるだろ、なあロアンス?」微かに頬を朱に染めながら三シューは黙って首を上下に振った、ワースムはこれ見よがしに「ほらな、ロアンスもこう言ってる何も問題ないだろ」やり取りを見ていたフィアナスは(やっぱり乙女心にはとことん鈍感だな・・・これなら心配する必要は無いか、ロアンスには悪いけど、)ひそかにフィアナスは心の中で思った、「さてとそれじゃいきますか、お客さんも待たしちまっているしな、」ワースムが口にすると、二人は首をかしげた、続けてワースムはこう言った「いまにわかるさ、ロアンス、魔眼の準備をしておけよ、」そう呟き1人で歩きだした瞬間、上から突如ナイフを持った男が突撃しワースムの首を掻っ切ろうとした瞬間、左足を軸にして、右足を時計回りに回転させ、曲刃刀を抜きながら居合いのようにその男の腰を切断した、血と臓腑が飛び散るのを避けながら、「ほらな、お客さんだ、ロアンス、お客さんはご丁寧に殺意をもってお出迎えしないと失礼だからな」ロアンスは肘から手の先まである、両刃剣を構えながら早口で問いただした。「敵は?」「今のを入れて五人、接近戦では勝ち目が無い事を分からせたから・・・たぶん次は攻撃系の魔術か、ほらきた、後ろから火球が迫ってきたが、手早く反射障壁を張ると魔術は反射されて岩の向こうで爆発した、ワースムは煙草に火をつけながら「後三人は任せたぞロアンス全員狩るのに五分も掛からんだろ」三シューは黙ってうなずくと目にも止まらない速さで移動した、ワースムは煙草を吹かしながら言った、「で、いつまで死んだ振りをつつけるんだ奴さん?」煙草を口にくわえながら腰の拳銃を抜くと、上半身だけになった敵は、「まさか・・・まさか聖人がここまでやられるなんて想定していなかったんだ・・・」ワースムはその物体に銃口を突きつけながら「聞きたいのはそのことじゃない、おそらくお前たちはレザイアク帝国に金で雇われたものだろうな、そんなお前たちがなぜ聖水を手に入れた経緯を聞こうか?」その男は恐怖に顔を染めながら「分かった話す!話すから銃口を逸らしてくれ!」懇願した、銃を降ろすと男はしゃべり始ことめた「レザイアク帝国が悪魔の苦手とする聖水を手に入れたかは、しらねぇんだ、噂じゃ聖人の部隊を作るために聖水がある国を片っ端から強奪しているのを聞いたことがある。「次の襲撃する国は?」大剣の柄に手を掛けると「レロンス国だ!頼むこれだけしゃべったんだ命・・・」その瞬間ワースムは大剣を上半身だけになった敵に向かって一直線に振り下ろした。その様子を見ていたフィアナスは「容赦ないね・・・それでも勇者を名乗るつもり?」ワースムは不服そうに煙草を吐き捨てると、「これでも半分魔王の血が流れているんでね、悪く思うなよ、」忌々しい口調でワースムは言った。「それで、次の目的地はレロンス国?」「そうだなあそこは小国だが資源が豊かで悪魔の標的になりやすい国だ、すぐに向かう事になるだろう、」すると、突然「人様を使って、自分は女性と話ですか、
そうですか、」ワースムが振り向くとやや不服そうな顔をしたロアンスが返り血の浴びて立っていた。「ずいぶん早かったじゃないか、敵さんの息の根は・・・」「もちろん止めました、絶叫が心地よかったですね、それで次の目的地は?」ワースムは決意をはっきりと表すような声で「レロンス国だ、急ぐぞロアンス、魔族に出し抜かれては適わんからな、」
同刻 魔王城
「やはり聖人ごときでは手も足も出んか・・・」ワースラーは口調とは裏腹に子供の成長を心から喜ぶような父親の表情をしていた。その様子を見ていた給仕は、ため息を吐き、「しかし、あの魔術障壁の展開の速さ、体捌き、
魔力、剣術などはどれをとっても一級品でございます。並みの強者では相手にならないかと思われますが、」魔帝はどこか愉しげに「それだけ我が息子が成長した証だ、しかし油断はできんな・・・一刻も早くレロンス国の侵攻を早めなくてはならんな、」給仕は言った「あの輩から情報が漏れた危険性がありますがどうします?「レロンス国はあの壁が厄介だ、しかも今は魔族の警戒が激しくなっているな・・・」魔帝は顎に手を掛けると、「良し、内側から攻めるのみだ、諜報員に連絡を取り、四天王の1人幻天王ラシュムミレリアの部下ゲンガルスを動かせ、」給仕は「了解致しましたワースラー様、直ちに連絡致します。」魔帝はどこか愉しげに「さあ我が息子よ父にその魔族の力、幻術士相手にどこまで通じるか楽しみであるぞ、」そう言い放つワースラーの顔はどこぞの父親と変わらない表情であった。
次回予告
「宗教なんてものは、戦争の道具か、心の拠り所か、排他的理由になるかだ、両手がふさがるなら、剣でも握ってたほうがまだマシだな、」アンベスト ワースム
「関係ないことです、ワンマンで素敵な勇者様が1人で勝手に突っ走っていっただけですので、」ロアンス三シュー
王女の登場で三角関係に?幻術士ゲンガルスの実力とは?
第一幕 第一部 最終章 一つの疑念と恋心
不定期掲載ですみません